幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 交際の最後は泊まりがけで丸二日、二人きりで過ごした。

 平日だったけれど、沙也は急遽、有休を申請して休みを取った。

 だって仕事よりずっと大切なことだったから。

 清登はもちろん「休みになんてさせてごめん」と言ってきたけれど、沙也はすぐ「私が決めたことだよ」と笑顔を向け、最後の時間ははじまった。

 何気ない二日間だった。

 二人とも、いつも会っているときの飾らない私服姿で、沙也の家の近くを散歩した。

 子どもの頃に遊んだところ、特別な想い出がある場所、一緒に通った小学校も……。

 ひとつずつ、想い出が沙也の中に降り積もり、胸の奥に定着していくようだった。

 きっと何歳になっても残るだろう、と沙也は今から確信する。

 食事も近くで摂った。

 高校生の頃、よく行ったカフェ。

 高校生がよく行けたくらいだから、高級店どころか、気軽に入れる小さな店だ。

 今の清登にとってはこんな庶民も庶民の店でご飯を食べることなどあまりないだろうに、とても嬉しそうで、なにを見ても笑顔で、ご飯も食後のスイーツも「美味しい」と言っていた。

 沙也も同じだったことは言うまでもないだろう。