ただ、あの想い出はもうホテルを出る前、置いてきた。
夜明けから、数時間もぐすぐす泣いて、そのあとシャワーを浴びたときに、流してしまったつもりだった。
だから、今、頭に浮かんだ声は、数年前に聞いたものだ。
『沙也さ、昨日のテレビ見たか!? すっげー広い海に住む動物のやつ!』
想い出といえるかも怪しい、記憶の断片。
日常の何気ない会話。
……ずっとそばにあったもの。
彼・香々見 清登は沙也にとって、身内を除いたら一番近しいひとだ。
いや、『だった』か。
沙也は頭の中で、自分の思考に訂正を入れた。
これからは、彼にとって『一番近しいひと』は別のひとに……ああ、やめよう。
もう一度、自分の思考に言い聞かせ、沙也はただ、想い出をぼうっと反すうした。
夜明けから、数時間もぐすぐす泣いて、そのあとシャワーを浴びたときに、流してしまったつもりだった。
だから、今、頭に浮かんだ声は、数年前に聞いたものだ。
『沙也さ、昨日のテレビ見たか!? すっげー広い海に住む動物のやつ!』
想い出といえるかも怪しい、記憶の断片。
日常の何気ない会話。
……ずっとそばにあったもの。
彼・香々見 清登は沙也にとって、身内を除いたら一番近しいひとだ。
いや、『だった』か。
沙也は頭の中で、自分の思考に訂正を入れた。
これからは、彼にとって『一番近しいひと』は別のひとに……ああ、やめよう。
もう一度、自分の思考に言い聞かせ、沙也はただ、想い出をぼうっと反すうした。



