幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 ここまでの沙也は、仕事帰りだから、オフィスカジュアルの格好だったのだ。

 きちんとした格好といえばそうだけど、ホテルディナーには少し足りない格好ではある。

 だから、ここまでしっかり準備を整えて、迎えに来てくれた清登に感謝するばかりだ。

 それで清登のエスコートで、一室に案内された。

 着替えと荷物置きのために借りたらしい。

 清登も「別の部屋で少し支度を直して来るよ」と言い、行ってしまった。

 少し直してくる、というのは、カジュアル目から、しっかりセミフォーマルにということだろう。

 どんな素敵な姿だろう、と想像するだけで沙也はわくわくしてしまった。

 それに、ホテルの一室ということで、意識してしまうこともある。

 もちろん、この十日間の恋人同士の時間で、こうしてどこか泊まりをする可能性もあるのだろうな、ということ。

 大人の交際なのだ。

 単にデートをして、一緒に過ごしておしまい、というのは子どもっぽ過ぎるだろう。

 だから『そういうこと』もあるのだろう、とは、交際についてしっかり吞み込んでから、覚悟していた。

 覚悟というと大げさだが、嫌な意味ではない。

 むしろ、期待や幸せの予感に対して、心を決めるという意味だ。