幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 もう一度、目が真ん丸になっただろう。

 沙也と手を繋ぎ、清登はやはり微笑だった。

「さ、行こう。もう少し走るから、なにか飲み物でも買おうか?」

 なのに何気ないように、そんなことを言うのだ。

 沙也は内心、軽く膨れてしまう。

 ずるい、と思ったのだ。

 こんなにドキドキさせてくるのに、自分ばかり、余裕のあるような表情をして!

 そんな気持ちが一瞬だけ溢れる。

 でもせっかく、こうして恋人らしくいられるときなのだから、そんなふうにぷんぷんしていたら勿体ない。

 それに、こういう表情を見せてくれることや、優しく手に触れたり、繋いでくれたりすること。

 心から嬉しいと思う、そちらをちゃんと意識していたいと思うのだ。

 ……ちゃんと覚えていたいから。

 十日後にすべてが終わり、そのあとなくなってしまうのだとしても。