「ありがとう、洋斗。ママもにこにこしてるからね」

 沙也は一歩踏み出して、洋斗のやわらかな頬を撫でる。

 すでに浮かべてしまった笑みで、洋斗はもっと強く頷いてくれた。

「うーん! にこにこする!」

 そのとき、スタッフが寄ってきた。

「そろそろお時間でございます」

 それだけ告げて、すっと下がっていった。

「ああ」

 清登はそちらへ少しだけ視線を向け、軽く返答する。

 そうしてから、沙也と洋斗を促した。

「さぁ、行こう。沙也。洋斗」

 洋斗を片手で抱いたまま、清登の片手は沙也の肩に回す。

 そっと、ドレスが崩れないくらいの力で抱き寄せてくれた。

「今日からも、これからも、ずっと一緒だ。二人を絶対に離さない」

 沙也と洋斗をしっかり抱いて、強い決意で言ってくれた清登。

 沙也は熱い胸を抱えながら、そっと清登に身を寄せた。

「私も同じだよ」

 静かに言った言葉。

 洋斗も「おなじぃ!」と繰り返す。

 これまでの日々があって、今日がある。

 そして今日があって、これからの日々がある。

 これからも、ずっと三人で。

 この扉から踏み出す一歩から、三人の明るい未来がはじまっていく。


(完)