「さ、洋斗。これからドアが開いたら、いっぱいひとがいるけど、にこにこしてような」

 そろそろ呼ばれる時間だ。

 清登が洋斗に声をかけた。

「にこにこー?」

 洋斗は不思議そうに繰り返す。

 披露宴の会場はとても広いし、挙式のときよりさらに多い人数がいるから、まだ幼い洋斗には少し難しいかもしれない。

 沙也もその点は少し心配だった。

「ああ。とっても素敵な日なのはわかるだろ?」

 その洋斗に、清登は優しく話す。

 沙也が安心してしまうほど優しく、わかりやすい言葉だった。

「うん!」

 聞かれたことに、洋斗はいいお返事をした。

 力いっぱい頷く。

 清登はそれに笑みを濃くして、もうひとつ、言った。

「だから、『嬉しい!』って気持ちで、パパと一緒に、にこにこしていてほしいんだ」

 その言葉と笑みで、洋斗には伝わってくれたようだ。

 ぱっと顔を明るくして、こくこく頷く。

「うん! うれしー! もん!」

 上手にお返事して、受け入れてくれた洋斗。