幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 一通りの誤解が解けたあと。

 真悠は今度、崖際ではないところへ移動して、柵の前から海を見つめた。

 そこで話をはじめる。

「二年くらい前にも……婚約破棄の話が出たの」

 静かに言われたことは、沙也は少し考えなければいけなかった。

 婚約破棄……二年くらい前……。

 数秒考え、はっとする。

 まだ自分があのマンションにいたときのことだ。

 明依に相談したことがあった。

 母から『清登の家がごたついているよう』とうわさを聞かされた、きっとあれだ。

 ただ、今ここで「知っていた」とは言えない。

 どうして知っていたのかとややこしいことになってしまう。

 よって沙也はそう言うのをやめておいて「そうだったんですか」と相づちを打った。