幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 そこからあのときの想い出話になる。

 わずかに届いてくる潮風を感じながら交わす、二人共通の想い出は、とても優しい会話だった。

「拾った貝殻を沙也にやったっけ。拾ったのをやるなんて、子どもだったよ」

 苦笑して話す清登だったが、沙也はすぐに首を振った。

「そんなことない。すごく嬉しかったし……」

 そこで少しだけ言葉は途切れてしまった。

 流石にこれを言うのは気恥ずかしかったからだ。

 でも今、ごまかしてしまったら、後悔する気がした。

 この十日間が終わったら、もう言っていいことではなくなるかもしれないのだから。

「……今も、とってあるの」

 恥ずかしかったから、視線は逸らしてしまった。

 手をかけていた柵も、ぎゅっと握りしめてしまう。

 清登から、先ほどよりもっと驚いた空気が伝わった。