「……」
不意に、くちびるが動いた。
多分そのくちびるは、名前を発する形に動いたはずだ。
ただ、声にはならなかった。
もう呼んでいい名前ではないから。
そう悟ってしまったから。
自分はもう、名前すら気軽に呼べないほど、彼と離れてしまった。
無意識の行動で実感して、沙也の胸は、今度、はっきりずきんと痛んだ。
ぎゅっと胸元のシーツを握る。
すぐにその手の甲に、ぽた、ぽたっとしずくが落ちた。
冷たい涙が、次々と落ちてくる。
本当に終わってしまったのだ。
長い、長い初恋は終わった。
昨夜という、とても甘くてとても切ない、最初で最後の一夜によって。
不意に、くちびるが動いた。
多分そのくちびるは、名前を発する形に動いたはずだ。
ただ、声にはならなかった。
もう呼んでいい名前ではないから。
そう悟ってしまったから。
自分はもう、名前すら気軽に呼べないほど、彼と離れてしまった。
無意識の行動で実感して、沙也の胸は、今度、はっきりずきんと痛んだ。
ぎゅっと胸元のシーツを握る。
すぐにその手の甲に、ぽた、ぽたっとしずくが落ちた。
冷たい涙が、次々と落ちてくる。
本当に終わってしまったのだ。
長い、長い初恋は終わった。
昨夜という、とても甘くてとても切ない、最初で最後の一夜によって。



