幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

「ええ。ですがお話はまたの機会にでもして……出発してよろしいですか? 清登様」

 沙也のお礼には軽い微笑だけを返して、目暮はすぐ前を向き直した。エンジンをかける。

「ああ、頼むよ」

 清登が軽く答えて、それで車は発進した。

「目暮がこの状況でいると、申し訳ない気持ちになるな」

 走り出した車の中で苦笑したのは清登だった。

 秘密裏に動いたことを、勝手に暴いたのだからそう思って当然。

 沙也の胸も少し痛んだ。

「ええ、慎重にしましたのに、まさか露見するとは」

 目暮の返事も苦笑になる。

 少し恨むような内容だった。

 ただし、声に嫌悪はまったくなかったから、茶化したいとかそういう気持ちなのだろうな、と沙也は感じた。

 その通り、清登の答えるのも穏やかだった。

「だけど、沙也にアクセスしてくれたことは感謝してる。あれがきっかけだったんだから……。ありがとう」

 そんな、少々気まずいながらも、嫌なものではない雰囲気の車中。

 車はやはり振動もなく走っていき、やがて例のホテルの乗降場へ乗り込んでいった。