幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 今から向かうどころか、部屋の中にへたり込みたいくらいだったけれど、沙也はまず、鼻から大きく息を吸った。

 数秒、止めて、大きく吐き出す。

 お腹に手を当てて、なんとか繰り返した。

 これはヨガの呼吸法だとかで、心を落ち着ける効果があると教えてもらったものだ。

 その通り、五回ほど繰り返したときには、ほんの少しだけ、数ミリほどではあったものの、気持ちは通常に近付いてくれたように感じられた。

「まーまぁ?」

 不穏な空気はもちろん感じ取っていたらしい洋斗が、足にくっついてきた。

 向こうも心配そうに、見上げてくる。

 沙也は息をすべて吐いてから、しゃがみこんだ。

 洋斗に腕を伸ばす。

「大丈夫だよ。すぐに戻ってくるからね」

 やわらかく抱きしめて、背中を撫でる。

「ん! ぜった!」

 洋斗は安心したように言い、声を上げた。

 これも『大丈夫』と同じ。

『絶対』。

 やはり沙也がよく言うから覚えてしまった言葉だ。