聞き返そうかと思ったけれど、それより、答えのほうが重要だろう。

 でも考えるまでもなかった。

 返事なんてひとつしかない。

「……わかった。じゃあ、十日」

 沙也は口を開いた。

 くちびるは震えた。

 ただしこれは、大胆なことをしてしまった、という意味での震えだ。

 決めたことに迷いや後悔はない。

 だってこのままおしまいになれば、絶対に後悔する。

 そうわかっていたから。

 十日でもいい。

 一生で一番、素敵な日々になるだろうから。

「ありがとう」

 ほっとしたように、固かった声をやわらかくした清登。

 そのあとはもう、なんでもない話になった。

 風に吹かれて曖昧になった言葉については、言わなかった。


 だから、せめて、それまで。


 沙也の耳には、そう言ったように聞こえた言葉。