幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 でも清登のほうは違った。

 洋斗の顔を見て、不審な顔だろうと目が合ったことで、感情が刺激されたのだろう。

 ぐっと喉が鳴り、表情が張り詰める。

 まるで泣き出しそうな顔、と沙也が思ったときには、本当にそうなっていた。

 清登のすっと涼しい目元に、じわっと涙が浮かび、つっと目尻から流れる。

「……洋斗」

 絞り出すように清登が声を出す。

 そしてその声に刺激されたように、浮かんだ涙は、もう一筋流れた。

「……ごめん。こんな俺が……、パパで……、ごめん」

 清登が泣くところなんて、何十年ぶりかに見た。

 沙也は驚愕してしまう。

 自分の胸も、かっと熱くなる。

 ぐぐっとそこから熱いものが込み上げてきた。

 いけない、泣いたら洋斗を心配させちゃう。

 そう思ったのに、これほど感情が昂って、耐えられるものか。

 ぽろぽろっと、涙の粒が頬を伝った。