幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

「意外と早かったよ。まだ二十六だってのに、婚約とか」

 清登のほうは、早すぎると思っているようだ。

 眉を寄せて、髪に手をやった。

 綺麗に整えられている、真っ黒な短い髪。

「そんなことないよ。もう大人だもの」

 その様子を見ながら、沙也は静かに口を開いていた。

 意外と声は震えなかった、と、他人事のように思った。

「そうだけどな」

 清登も同調する。

 自分でもわかっているのだろう。

『いつか来る』のが、ついに来たのだと、実感として。

「どんなおうちの方?」

 だから沙也は続ける。

 胸も痛まなかった。

 その痛みは、すべて終わってから襲い来るのだけど、このときはほとんど自覚できなかった。