幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 深く息をして、なんとか少し気を落ち着ける。

 しかし先ほど広げたアルバムが、まるで呼んだようだった。

 沙也が上げた視線の先には、写真立てがあった。

 どくり、と心臓が跳ねる。

 写真立て。

 でも写真は見えない。

 ……伏せてしまったから。

 写真立ては、写真を見せることなく、悲しげに倒れている。

 大切な想い出を、こんなふうに扱うしかないことが、急に悲しくなってきた。

 ここ数日、だいぶ落ち着いていた気持ちは簡単に波打って、沙也の目から、ぽろっと涙をこぼさせていた。

 涙になるのはもう一週間ぶりくらいだったかもしれない、と止まらないそれを拭いながら、沙也は自嘲するように頭に浮かべた。

 あの夜のこと。

 いや、あの夜が起こる原因になったことを。