幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

「……そう。あまり夜更しするんじゃないわよ」

 だが流石に様子が少々おかしかったか。母は怪訝な顔になった。

 それでも特になにも聞かず、小さな子どもに注意するようなことを口に出した。

「わかってる!」

 普段、こんなことを言われたら「子どもじゃないのに」と膨れるか呆れるかするのに、今はそんな言葉も態度も出てこない。

 その言葉で終わりになった。つっかけていたスリッパの音を、ぱたぱた立てながら、沙也は階段をのぼって、自室へ入った。もう洗濯物のことなど頭になかった。

 子どもの頃から使っている自室に入って、ばたん、とやや乱暴にドアを閉めて、沙也はやっと、ふーっと息をついた。

 自室は六畳ほど。ピンクのカーテンをかけた部屋の端にはベッドがあり、カーペットの床にローテーブルと座椅子を置いている。居心地良いように作った部屋だ。

 でも今は胸が苦しかった。まるで溺れたように、息苦しい。

 一歩間違えれば過呼吸になってしまいそうなので、必死で心を落ち着かせようとする。これ以上、様子がおかしいと、母たちに知られるわけにはいかないのだ。