幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 わかっていることだ。

 ずっと父親を周りに隠し続けることは、きっと不可能。

 言い訳だって、通じるひとと通じないひとがいるだろう。

 それに洋斗が大きくなれば、本人がきっと望むはず。

 公表するしないはともかく、自分の父親というのが誰なのか。

 知りたいと望むのは当然のことだ。

 だから、いつかははっきりさせなければいけない。

 今はまだ先送りにしていただけなのだ。

 胸がずきんと痛んだ。

 もっと早くなんとかしていたほうが良かったのかな、なんて思ってしまって。

 今、後悔しても遅いうえに、この場に相応しくもなかったので、とりあえず脇へ置いておいたけれど。

「わたくしの話で恐縮ですが、わたくしは十五歳になるまで、本当の親を知りませんでした。知りたいと望まなかったのです。だいぶ呑気なことでした」

 目暮の話は静かに続く。

 沙也も、一通り聞こうと思って黙って聞いた。

「しかしある日、突然日常は変わりました。……晴恵(はるえ)様。清様のご正妻ですね。その方が乗り込んできたのです」

 目暮の声は静かだった。

 だが明らかに、感情を殺している、という声だった。