幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 呆然としてしまった沙也。

 目暮は眉を下げた。

 沙也にとってショックだったのはよくわかるだろう。

 がた、と音がした。

 目暮が席を立った音だ。

 沙也は呆然とその彼を見上げたが、彼は無理に作った、という様子ではあったけれど、笑みでまったく関係のないことを言った。

「飲み物をいただいてまいります」

「……はい」

 どうして、今。

 思った沙也だったが、つかつかと去っていった目暮は、この場にまったく似合わない黒スーツ姿で、ドリンクバーの飲み物なんて汲みはじめた。

 ぼうっとそれを見守ってしまった沙也。

 しかし、急に目暮が「飲み物」などと言った理由はすぐにわかった。

 目暮はコーヒーを注いだあと、別のカップを取って、もう一杯コーヒーを注ぎはじめたのだから。

 ……私に飲み物をくれるため。

 理解したものの、これまた意外で、沙也はぼうっと頭の中で言うしかなかった。