幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

「ではわたくしは車ですので。お店の駐車場へ先に参りますね」

 沙也に乗るよう促すことはなかった。

 内心、ほっとした沙也だった。

 車に乗せられてしまえば、そのままどこかへ連れ去られる可能性だってある。

 彼はどうも、そんな心配をさせないために、「車を回す」とだけ言ったのだ。

 ……気が回る方なんだなぁ。

 沙也はここで初めて、彼に好感を抱いたかもしれない。

 だが、「あちらに停めていて」と、スロープの先にあった車を指差されて、沙也は、あっと言うところだった。

 だって、あの車は知っている。

 黒塗りの高級車。

 何度も乗ったのだ。

 あの十日間の交際のときに。

 車は会社で扱っているだけあって、外車であっても、なんとなくわかる。

 あれはほぼ確実に、あの十日間で清登が運転したり、運転手が乗せてくれたりしたものだ。

 つまり……彼は、あのとき清登についていた運転手。

 彼の正体を、沙也はやっと正しく知った。