幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 ぺこり、と小さく会釈をした彼。

 紙には、名刺には、香々見家の運転手であると確かに書いてあった。

 きちんと香々見家の判も押してあって、多分捏造のものではないだろうと思えるものだ。

 香々見家……清登くんの家の方。

 そんな方が、ここに。

 沙也の気持ちは、一気に警戒に振れた。

 もちろん、ここまでとはまったく別の意味の警戒である。

 もはや、ナンパかなにかであったほうがよっぽどましだったようにすら感じる気持ちだった。

「ご安心ください。わたくしは、私的に沙也さんにお会いしに来ただけでございます」

 私的に、と沙也は警戒の思いの中で、繰り返した。

 その中でなんとか思考を回転させて、なんとか思い当たる。

 私的にということは、香々見家から遣わされたとか、そういうことではないのだろう。

 それなら少しは安心?

 思ったが、即座に否定した。

 私的にと言ったところで、この方は香々見家の関係者なのだ。

 沙也と清登、そしてこの事情となにも関係がないなんて、思えない。