幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

「ええ。お父さんとね」

 幸い、沙也が願った通りになった。

 母はそのままリビングに入ってきて、アルバムを手に取った。

 布張りのアルバムは少し重たい。

 両手で持って、開いていたページに視線を落とす。

「今度、ご結納なんでしょう。懐かしくなって」

 母の声は穏やかだったけれど、沙也の胸の奥へ、真っ直ぐに突き刺さってきた。

 考えたくないと思っていたことだ。

 考えないようにしようとしていたことだ。

 それを突き付けてきた母が、今ばかりは恨めしい。

「そう……だね」

 なんとか返事をした。

 いくら胸が痛くても、悟られるわけにはいかないのだから。

「私たちもお祝いしないとね。ご祝儀は郵送すればいいのよね?」

「そうだと思うな」

 母はなにも知らないのだ。

 この状況ではなにもおかしくないことを口に出した。

 沙也もなんとか平静に聞こえるように気をつけながら、言葉を発する。