「ええ。お父さんとね」
幸い、沙也が願った通りになった。
母はそのままリビングに入ってきて、アルバムを手に取った。
布張りのアルバムは少し重たい。
両手で持って、開いていたページに視線を落とす。
「今度、ご結納なんでしょう。懐かしくなって」
母の声は穏やかだったけれど、沙也の胸の奥へ、真っ直ぐに突き刺さってきた。
考えたくないと思っていたことだ。
考えないようにしようとしていたことだ。
それを突き付けてきた母が、今ばかりは恨めしい。
「そう……だね」
なんとか返事をした。
いくら胸が痛くても、悟られるわけにはいかないのだから。
「私たちもお祝いしないとね。ご祝儀は郵送すればいいのよね?」
「そうだと思うな」
母はなにも知らないのだ。
この状況ではなにもおかしくないことを口に出した。
沙也もなんとか平静に聞こえるように気をつけながら、言葉を発する。
幸い、沙也が願った通りになった。
母はそのままリビングに入ってきて、アルバムを手に取った。
布張りのアルバムは少し重たい。
両手で持って、開いていたページに視線を落とす。
「今度、ご結納なんでしょう。懐かしくなって」
母の声は穏やかだったけれど、沙也の胸の奥へ、真っ直ぐに突き刺さってきた。
考えたくないと思っていたことだ。
考えないようにしようとしていたことだ。
それを突き付けてきた母が、今ばかりは恨めしい。
「そう……だね」
なんとか返事をした。
いくら胸が痛くても、悟られるわけにはいかないのだから。
「私たちもお祝いしないとね。ご祝儀は郵送すればいいのよね?」
「そうだと思うな」
母はなにも知らないのだ。
この状況ではなにもおかしくないことを口に出した。
沙也もなんとか平静に聞こえるように気をつけながら、言葉を発する。



