幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 先ほどまで沙也と洋斗しかいなかったのに。

 いつの間にか近寄っていたなんて、怪しいひとでは?

 女性として、抱いて当然の警戒を覚えて、沙也は構えてしまう。

 しかし、振り返った先にいた人物を見て、沙也の気持ちは、警戒から疑問になった。

 だってそこにいたのは男性だったが、この、海辺なんて場所に似つかわしくない格好だったのだから。

 襟足が少し長めの黒髪、すっと涼しい目元。

 整った顔立ちと言えるだろう。

 その容姿に、沙也は一瞬、既視感のようなものを覚えたが、それより先に目についたのは、彼の服装。

 黒いスーツだった。

 ぴしっと着こなしていて、ワインレッドのネクタイを締めている。

 スーツの男のひと?

 なんでこんなところに?

 沙也の頭の中は疑問でいっぱいになってしまう。

 どう見てもナンパや怪しいひとではない。

 いや、怪しいひとって、別の意味で不審だけど……。