幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 それでもスロープに差し掛かり、やはり気を付けてゆっくり、ゆっくり降りていった。

 海に一番近い、細い通路へ入る。

 これ以上近寄るつもりはなかった。

 砂浜にベビーカーは入れないし、抱っこしても、洋斗を歩かせても、危ないと思う。

 まだ少し早いから。

 せめて保育園を卒業する年頃くらいまでは、このくらいの距離にしようかな、と思って、今日は少し遠くから。

 それでも先ほどより近くなったうえに、高さが浜辺とほぼ同じになった。

 つまり、より目の前に、ダイナミックに見られるようになったわけで。

 今の洋斗には、新鮮でたまらないだろう。

「うみぃ! ざぶーん! ざぶぅん」

 ベビーカーから身を乗り出し、手をぱたぱた振る洋斗。

 まるで波が打ち寄せる様子を真似したいというような仕草だ。

 沙也が愛おしさに、笑みを浮かべてしまうくらい、かわいらしく、無邪気だった。

 自分の無邪気だった頃まで思い出させるよう……と、沙也が思ったときだった。

「沙也さん」

 急にうしろから声がかかった。

 男性の声だ。

 名前を呼ばれたことにより、そもそも声がかかったことに沙也はびっくりした。

 ばっと振り返る。