幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

 静かに口に出した名前。

 母は再び黙る。

 目を見開き、絶句した顔だ。

 すべて知っただろう。

 沙也がこんな形で妊娠を自覚することになったのも、そして公表したら迷惑になると言ったのも。

 こんな反応をさせてしまってすまない、と沙也の胸を痛ませた。

 でも話を切る気はない。

 ちゃんと、全部、説明する。

 聞いてもらえるのなら、だけど。

「……どうして、そんなこと……。清登くんの立場がわかっているの?」

 やはり数十秒の沈黙のあと。

 母は絞り出すような声で言った。

 うめくのにも近かった。

 だが、その反応と言葉は、沙也が「こういう反応もあるかもしれない」と思っていたことのひとつだった。

 だからこう言おうと決めていた言葉を返す。

「わかってる。わかってたからこそ……婚約前に終わらせたの。今はもう、なんの関係もないよ」