幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

「良かったら相談に乗るよ?」

 明依は優しい。

 沙也の顔を覗き込んで、そんなふうに言ってくれた。

 なのに沙也の首は縦に動かなかった。

 本当は聞いてもらったほうがいいのだとわかっている。

 でも今はまだ、自分でも心の整理ができていない。

 つまり、落ち着いていなければ、まとまってもいない。

 まともに説明できる自信がなかった。

「ありがとう。……うん、今度、お願いしようかな」

 よって返事は濁った。

 気遣ってもらっているのに、無下(むげ)にするようで心が違う意味で痛んだけれど、今はこれしかできない。

 そんな返事だったのに、明依はもう五年は友人でいるのだ。

 沙也の気持ちはなんとなくわかるのだろう。

 笑顔になってくれた。

 きっと沙也を安心させるための、作った笑顔だっただろうけれど、今の沙也にはありがたかった。