な、なにっ…?なんで抱きつかれたの…っ!?



慌てて振り返ると、私のすぐ目の前には整った男の子の顔があった。



「…そんな可愛い声出しちゃっていいの?ここが廊下じゃなかったら、完全に襲ってたんだけど」



「っ…!?」



この人、朝から何言っちゃってるんですか…!?



なんとなくだるそうな雰囲気を醸し出しながら、言っていることは本気だと思わせられるのはなんでだろう…。



そこで、ふと気がついた。



…これをもし詩音先輩に見られたら、詩音先輩が大変なことになっちゃうような…。



もちろん、今そんなことになるわけないっていうのはわかってる。



でも…もし私が逆の立場で、詩音先輩が女の人に抱きつかれていたら嫌な気持ちになるから。



「あ、あのっ…ど、どいてくれませんか…?」



こう言うのが正しいと思った。



私、今あの携帯小説の女の子みたいになれてたかな…?って、ちょっと嬉しくなったんだけど。