スヤスヤとこの状況で眠れてしまう皇子に、感心してしまう。

 私は痛む背中を擦りながら寝返りを打つ。この時代にふかふかのお布団なんて、勿論ない。

 床に薄い茣蓙(ござ)みたいなものを敷いただけだから身体が痛む。(ふすま)という、薄い布を掛けるだけだから寒くて眠れない。

 ……早く柔らかな自分のベッドで寝たいな。

 何気ない未来の生活が、今ではとても有難いものだったと知る。だけど、この世界で食事と寝る場所を与えてもらえただけでも私は運が良かった。

 ……ありがとう。

 薄い衝立の向こうに見える、月の灯りに照らされた皇子の顔を眺めながら心の中で感謝する。

 どこか子供っぽいのに、落ち着いた話し方をして。朧月のように儚い雰囲気なのに、凛とした存在感があって。

 私の時代では、出会ったことのないような不思議な男の子。タイムスリップという不運の中で、この出会いだけは唯一の幸運。