狼の目に涙

「三浪、歩くの遅い。さっさと歩け」



渋々、佐々原くんの一歩後ろまで駆け足で近寄ると、私の頭一つ分大きな体がこちらを向く。


「俺から離れるなよ」

『…分かってる』



バイトを入れておけば、佐々原くんに会うことはなく、私じゃない誰かが佐々原くんの隣を歩いている。

そう考えると、胸がざわついた。


私じゃない誰かってどんな人だったんだろう。
私より守られ慣れてて、もっと佐々原くんの隣にふさわしくて、平岡さんにも目をつけられなくて。


そうだ。佐々原くんの隣にふさわしい人って、きっと素直で可愛い人だ。