狼の目に涙

「私のことは気にせんと。時間かかるから、あんたら先に行ってちょうだい」
『すみません…じゃあ』

佐々原雅は、ICカードを慣れた手つきで料金箱横の機械にかざし、私は財布から現金を出して、バスを降りた。

降りてすぐ、大学病院の大きさに足が止まる。
個人院しか知らない私にとって、この建物は巨塔だ。


さっきのおばあさんは大学病院へ。
私たちは病院と反対方向へ。


無言で私の前を歩く佐々原雅に、三分ほど小走りでついていくと、突然止まった。
目の前には新築の一軒家。