狼の目に涙

言われた通り、すぐ見えてきたバス停で立ち止まると、五分もしないうちに隣町の大学病院行きのバスが一台、目の前で停車した。

「乗るぞ」

ステップを上がって右の席がガランと空いていたので、入口のすぐ右の席の後ろに座った。


前の席は、佐々原雅が座ったから。


流石に隣には座れない。
距離が近すぎるし、出会って一日二日で隣に座れるようなキャラでもない。


どれほどの時間、こうして揺られているだろうか。

沈黙を気にした事がないから余計なのか、この冷たい空気に慣れなくて、ろくに見てもいないのに窓の外に目をやって、一時間経つのを待っている。