狼の目に涙

左隣を歩く佐々原雅を見上げると、気怠そうに歩きながらも視線は真っ直ぐで、私のつっけんどんな返しには動じてないみたいだった。


私の視線に気づいたのか、鋭い切れ長の目をこちらに向けられると、今さら佐々原雅の噂を思い出して、
〝殺される〟なんて焦りながら視線を足元に戻した。

「何だよ」
『いや。何でも、ないです……どれくらい歩くのかなと』
「もうすぐバス乗るから。あと一時間?」
『一時間!?そんなにかかるなら近くに住めば良いのに』
「じゃあお前の家に住まわせてもらおうかな」
『それは却下でお願いします』