狼の目に涙

「そういえばさ」
『ん?何ですか?』
「昨日何も言わなかったけど、一人暮らし?」
『…はい』
「わざわざ実家から遠いところ選んだ割に、部活は入ってないし。この学校、偏差値低いだろ。学校で選んだとも思えない。色々納得いかないんだよな」
『別に納得してもらわなくても。それに、実家なんてないですから。私の家はあそこだけです』

痛いところを突かれた。一人暮らしは私以外でもいるし、周りが見ても何の違和感もない。
ただこの学校を選んだ理由が、簡単には言えないから突かれたくなかった。


自分で空気を悪くして、止まった会話に焦る。
真面に雑談とか恋話とかしたことのない私には、疲れるし至難の業。