狼の目に涙

「あ、」

私を見て足を止めると、しばらく見下げたまま、クマから逃げるみたいに私に背を向けずに後ずさる。
やっぱり逃げようとしていたか。

離れていく腕を掴んで、佐々原雅を睨みつけた。

「お前、ここ来るの早すぎ」
『絶対逃げると思ったんで。ほら、逃げてもムダ!行くよ』

ここは流石に、逃げずに家まで連れて行ってくれるみたいで、私の半歩前を歩き出した。
学校前の歩道で倒れていた時は家が遠いと言っていたけど、どれほど遠いのか。