狼の目に涙

『佐々原くん、今日絶対送るから。正門で待ってるからね?じゃあ、ここで』
「え、だから送らなくて良いって。…聞いてねぇし」

佐々原雅の返しもろくに聞かず、小学校の集団登校並みに固まった人数で歩く、女子の群れの五歩後ろについた。
女子の群れは周りも気にせず騒いでいるので、五歩ほど離れていないと、奇声で鼓膜が破れそうになる。

今日も何とか助かった鼓膜にホッと胸を撫で下ろして、玄関で上靴に履き替えて教室に入り席に着くと、朝のホームルームが始まるまで自分の世界に入るため、本を開く。