狼の目に涙

と言いながらも、少し腕の力を強めた前田くん。


私は、前田くんに触れなかった。




私が触れたいのは、佐々原くんだから。





深呼吸すると、スパッと私から離れた。




「よし。学校行こう。今日はバイトないから、僕も病院行くよ」





前田くんの一人称が俺から僕に変わると、何事もなかったかのように、また雪道を並んで歩き始めた。


隣を見ると、溢れそうな涙を落とさないように気を紛らせているのか、雪を蹴っている。





この涙は私のせい。


でも、これから落ちる涙を私は拭えない。
拭っちゃいけない。