狼の目に涙

医者が患者へ感情移入するのは御法度だけど、
もう起きないかもしれない患者とその家族を目の前に、気遣いの欠片もなく淡々としていて、
心の中で静かに腹が立った。







事実を伝えることも大事で、それが医者の役目。



でも少しは、気持ちを汲む声かけをしてくれても良いんじゃないか。







言いたかったけど、声が出なかった。







もがき苦しむ佐々原くんと家族を前に、胸が詰まって。










『…毎日会いに来ます。目を覚ましてくれるまで、何度も声をかけますから』

「あこちゃんが来てくれると、雅も喜ぶよ。僕と母さんも交代でここに居ると思うから」