狼の目に涙

私がご飯を運ぼうとすると、自分でやるからとご飯が乗ったお盆ごと受け取り、私が食べていた場所の隣にお盆を置いて腰を下ろした。

お腹が空いていたのか、座ってすぐに手を合わせると、熱いお粥にのけ反りながら何とか口に運ぼうとする行動に、寝ている姿を見た時に感じた微笑ましさと同じ感覚になった。
ヤンキーだからといって、強面とか短気とかマイナスなイメージを持ちがちだけど、そういう人こそ心は誰よりも繊細で、相手の気持ちに敏感なのかもしれない。

さっきだって、お粥を作っただけで気を遣わせて悪いと謝ってくれた。
一人分ご飯の量が多いぐらい、なんて事ないのに。

「お前の飯、めっちゃ美味いな。良い嫁になれる」

佐々原雅の隣に座ると、突然言われた褒め言葉。
ヤンキーに言われると褒め言葉に聞こえないのは、何でだろう。