しばらく海に浸かってると、高崎くんも靴と靴下を脱いでいた


〈俺も海に浸かってみた〉


私の横に並ぶと一回りくらい背が高くて見上げないと顔が見えないほどだった


〈ねぇ、なんで俺が海に連れてきたと思う?〉


「えっ、海に連れてきたかっただけじゃないの?」


〈俺、耳は聞こえるけど声は出ないんだ。どれだけ頑張っても〉


うん、それがずっと不思議だった


ただ声が出ないだけなのかとも思ったけど


〈あのね、実は小学校の途中から声が出なくなったんだ〉


「う、そ」


あまりの衝撃的なことで言葉が出てこなかった


「じゃあ最初は出てたんだね」


〈そういうことなんだ〉


私たちは海から出ると、砂場に座り込んだ


〈あのね、前言ってくれたよね。「なんで声が出なくなったのか」って〉


あれはガラの悪い人達に絡まれてる時の事だ