『柊人…誰と電話？』

目に涙をうかべた頃、電話の向こうから女の人の声が聞こえてきた

しばらくするとその声は雅人くんのお母さんの声だったことに気がついた

『あ、雅人の…彼女と話してたんだ。ほら、前家に来た一花ちゃんって女の子覚えてる？』

彼女と聞いた瞬間、涙が引っ込んだ

「あ、あの…雅人君のお母さん…」

『あら、一花ちゃんだわ。久しぶりね？』

「お、お久しぶりです」

久しぶりに聞くお母さんの声に私は緊張していた

『美咲、柊人…あったぞ。死亡者、行方不明者の欄に雅人が載ってる』

また男の人の声が聞こえてきて、雅人くんのお父さんも家にいたんだ

そちらも新聞を見ていたんだ

「ま…まさ…」

電話の向こうで涙ぐむ声が聞こえてきた

私もいつの間にか泣いていたらしくお姉ちゃんが慰めてくれた

家に帰ってきたお母さんに何事？って顔されたのは言うまでもない

雅人くんは１人で飛行機に乗って、亡くなってしまったんだ

家族を置いて、１人で…