先輩の弾くギターの音が、乱れた。
「そんなこと聞いてどうすんの?栞」
「えっ」
メダカって呼んだり、栞って呼んだり、気まぐれ過ぎて慣れない。
私は先輩からギターを奪って弾く構えをした。
「私、弾けるようになったんです。happy birthday」
「ごまかしたな。まぁいいや、弾いてよ」
ゆっくりと、一音ずつ鳴らす。
音と音が繋がって、メロディになる。
「…どうですか?」
「うん、弾けてた。すごい」
と、名波先輩が微笑んで、私もうれしくて笑った。
偶然はじまった、2人だけの秘密のギターレッスン。
隠しごとだらけの私たちだったけれど、
今日も、隣でへたくそな音色をひびかせる。
そんなお昼休み。
キミと、放送室。
おわり