「何これ。メダカの?」
私より5分ほど遅れて放送室に来た名波先輩が、作業台の上に置いていたCDのケースを見て言った。
「あー…ハイ。クラスの子が流してほしいって」
「へぇ」
ケースに書かれた曲名を眺める名波先輩に気を取られながらも、CDを流し始めた。
最後にボリュームを上げ「よし、OK」と言って名波先輩を見る。
「名波先輩、知ってる曲ですか?」
あまり音楽を聞かない私は、知らない曲ばかりだ。
「だいたい知ってる」
名波先輩は私にCDケースを返すと、いつものようにカラカラと窓を開けて、スタジオのソファにドカッと座る。
ポンポンと空いた左側を叩いた名波先輩は「練習しますよ」と言った。