Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

私はそう言うと迷っている様子の彼の手を引いて構わず走り出す。

想定していないかった私の動きに引っ張られた彼が転びそうになるも、すぐに体勢を整えて私の早さに合わせて一緒に走る。


人混みに入れば自然と走るスピードも落ちて、ゆったりとした歩みになった。目に入るもの全てが新鮮できょろきょろと視線は右へ左へ。


お店を一つ一つじっくりとみて回る。綺麗な風車や、金平糖。現代では当たり前に存在するものが、この時代ではどれも高級品だ。


「疲れていないか?そこの茶屋に入ろう」


彼は私を店の緋毛氈(ひもうせん)の敷かれた縁台にエスコートすると忙しそうに働く店の奥へと消えていった。


腿に落ち着いた先ほどまで繋がれていた手が寂しい。茶屋を出た後もまた繋いでくれるだろうか。


「綺麗なお嬢さん、こんなところに1人なんて悲しいねえ。どう俺たちとあっちで遊ぼうよ」


「っ、あの、私ひとりじゃ」


どの時代にもこんな不埒な男たちはいるのかと思った。着ている物をはだけさせる男二人組。空いている私の隣に1人が座り、もう1人は正面でニヤニヤと笑っていた。


「へえお友達か誰かがいるのか?それとも随分上等な着物を着ているからお付きの女中とかか?」