Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

彼は刀から手を離して、そのまま首の後ろを叩く。それからぐるりと周りを見渡した。


「こんなへんぴな場所に君のような女性を置いていくのは気が引ける。……しばらくは君を俺の屋敷で監視下に置かせてもらう。それでいいか?」


「!!ありがとうございます」


「ただし変な行動を取ったら容赦しないからな」


そう言って歩き出した恭介さんについていく。話を聞くと彼はこの広がる野原が心落ち着くらしく、散歩に来ていたのだという。


しばらく歩けば彼の屋敷に着いた。どうやら恭介さんはこの時代でも権力と金を持ち合わせているらしい。


立派な佇まいの和風のお屋敷。現代の西洋風の屋敷も凄かったが、こっちには家臣たちも一緒に生活しているために人も多いし、敷地も大きい。


「おかえりなさいませ、恭介様」


家臣たちの中でも上の階級にいるのか、頭を下げる家臣らの真ん中にいた屈強な男性が声をかけた。


「失礼ですがそちらの女性は?」


「彼女はカスミ。記憶を失っているらしい。しばらくは預かることにしたから、監視兼世話役として女中を数人つけて“丁重に”扱うように」


丁重に、を一等強調して言った恭介さんに男性は唾を飲む。それから彼は後ろにいた私を見つめてから無言でその場を後にした。