Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

だけど、私のことは忘れないでほしい。もしかしたら私がタイムリープしたことによって未来で私たちが出会わないかもしれない。


彼が黒薔薇を刻まずに不老不死にならない可能性だってある。


そうなれば今私の中にある私たちの記憶はどうなるのだろうか。全ての中から恭介さんが消えてしまうのか。


もしどうなっても、私のことを忘れないで。あなたの記憶の中で私も生きていたい。


「__カスミ、と申します」


「カスミか。君の家はどこだ?もう直暗くなる、送っていこう」


立てるか、と言われて差し伸べられた大きな手のひらを掴んで立ち上がる。確かに辺りは街灯がもちろんないため、現代よりも暗く感じられた。


家、どうしよう。ないに決まってる。でも変なことを言えば不審人物として刀で切られちゃうかもだし。


「あ、えっと、私カスミっていう名前以外に何も覚えてなくて。ここがどこなのかも、家も……わかりません」


案の定彼の眉がぴくりと動いた。手が離れて、代わりに恭介さんは腰の刀をすぐに抜けるように手を置く。


鋭い眼光が私を探るように上下に動いている。心地悪く私も彼をじっと見つめた。


「はあ、君が嘘をついているようにはどうも見えないな。だからと言って不審な者を放っておくこともできない」