《side.佐々木霞》
大好きな桜の香りに包まれる。顔を上げるとずっと会いたかった彼が目の前にいた。永遠に感じるほど長かった1週間ちょっと。やっと、今、彼の元に帰ってきた。


嬉しくて、嬉しくて、全身で感じる恭介さんの温もりに、ぶわっと涙が流れ落ちる。


「会いたかった。ずっと会いたかった」


目を白黒させる彼が愛おしくて首に抱きついた。泣き続ける私の背中をぎこちなくさすってくれた。


「……すまないが、どこかで会ったことがあったか?」


「ごめんなさい、落下した驚きで……助けてくれてありがとうございました」


しゃくりあげる声でそう言った。今の私は地面に座り込んだ彼の足の間にペタンと座っている。


流れている涙を恭介さんの硬い指が拭った。彼の服装を見ると帯刀し、肩衣袴を着ている。


それに馴染むようにか落とされる直前で夜叉さんに私も着物に服装を変化させられていた。


夜叉さんは彼が不老不死になる前の時代にタイムリープさせると言っていたから、つまり。


__ここは400年以上前の戦国時代


確かに目の前の彼は現代の恭介さんよりも肌は焼けている。


「俺は桜坂恭介。君の名前は?」


どうしよう。ここで本当の姓名を名乗ってしまったら未来で私たちが再会した際におかしなことになってしまう。