勢いよく立ち上がる。その動きに夜叉さんはニヤリと笑う。


「そう来なくっちゃなァ!!恭介のいるだろう座標に“落とす”がいなかったらすまんが探せ。時代はアイツが不老不死になる前だ」


贈り物だ、と夜叉さんが指を鳴らすとルームウェアから着物へと様変わりした。


「どうしてそこまでしてくれるんですか?」


「……アイツは死にたがってただろう?ってことは運命に抗おうという選択を与えること、それ即ちイヤガラセになる」


「はい?」


「俺はアイツに嫌がらせするのが大好きなんだ」

「そ、そんなどうでもいい理由で!?」

そう言い切ると夜叉さんは立って私の肩に手を置く。久しぶりに屋敷に私たちの笑い声が響いた。


「俺の嫌がらせ相手を助けてこい、霞」


夜叉さんの言葉に大きく頷く。ハンカチを強く握り返した。


次ここに戻ってきた時は、必ず隣に恭介さんがいるように。


「……ってあれ、過去に行ってどうやって戻るんですか」


「……あ」


しまったという表情をする夜叉さんの肩に置いた手から光に包まれる。


次の瞬間に訪れる浮遊感。そして下に見える緑の野原。


「きゃああああ!!!!」


ぐわんと重力がかかり急速に空気を斬って地に近づく。近づいて気づいた。真下に人がいる。私の叫びにその人は空を見上げて、目を丸くした。


__ぼすん


その人は尻餅をつきながらも私を地面に落とすことなく受け止めてくれた。