Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

まだ動かしにくい体を必死に逃がそうとする。顔から離れた彼の手は私の後頭部に回った。


そして逃げようと暴れる私の体を恭介さんは抱きしめた。季節外れの桜の香りが鼻腔を通る。


触れるだけの優しいキスが降ってきた。ほんの数秒が遠く感じる。


「悠久の時の中で、霞が最後の俺の恋しい人だ」


__呪いが解けたら最後、アイツは死んじまう

恭介さんは動かずに涙を流す私の唇に自らの鎖骨を押し当てた。刹那、彼の体はだんだんと光の粒へと変化していく。


「どうして!!……いや、いや」


彼は私の体をベッドへと戻す。離れた腕を掴もうとするが、その手は緩やかに握られた。するりと彼は手中に何かを掴ませる。


手を開くと一枚の桜の花びら。


なんでこんなものを、投げつけようとしたが恭介さんはもうそのにはいなかった。同時に私の体から黒薔薇の印は消えていた。



愛おしいとは言ってくれないあなたは、今日も死ぬために生きているって思ってた。だけど別れは訪れて。


あなたは雪のようにとけて、明日からもう朝を一緒に迎えられないのね。



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事故から一週間の入院生活を終えて、帰宅許可が下りた。入院中は看護師さんやお医者さんがいて一人の時間が少なかったからよかった。