《side.桜坂恭介》
日を跨ぎ、身体中に巻き付いていた黒薔薇の蔓が徐々に引いていく。それとともに痛みも和らいでいった。
腕の中にいる彼女を見下ろせば、安心し切って眠っている。あんなにひどいキスをされた相手の前で無防備に。
俺を唯一殺してくれる存在が、必死に生かそうとする。求めていた死なのに彼女が俺にまだ生きていたいと思わせる。
今朝俺は霞を殺しかけた。夜叉がいなきゃ彼女は死んでいただろう。あんな怖い目に遭っておきながら、何度も俺に近づいてくる。
『大丈夫、私はずっとそばにいるよ』
生まれ変わっても尚、君は同じ言葉を俺にかけてくれるのだな。
亡くなった彼女と同じ顔、同じ声、同じ名前、同じ言葉。まるで生き写しだ。
__初恋だった。
400年以上前、呪いにかかる半年前。彼女__カスミ__は突然俺の上から降ってきた。天使のように空から。
咄嗟に受け止めた俺を見るとその瞬間に、わっ泣き出して言った。
『会いたかった。ずっと会いたかった』
初対面なのにだ。きっと混乱していたのだろう。結局カスミのあの言葉は誰に向けたものだったんだろうな。
俺はこの世でいちばん彼女が怖い。
眠る霞の前髪を分けて、額に口付けをする。あの花畑で与えたものとは違う。純粋な愛おしさ。
そしてこの世の誰よりも彼女が欲しい。
日を跨ぎ、身体中に巻き付いていた黒薔薇の蔓が徐々に引いていく。それとともに痛みも和らいでいった。
腕の中にいる彼女を見下ろせば、安心し切って眠っている。あんなにひどいキスをされた相手の前で無防備に。
俺を唯一殺してくれる存在が、必死に生かそうとする。求めていた死なのに彼女が俺にまだ生きていたいと思わせる。
今朝俺は霞を殺しかけた。夜叉がいなきゃ彼女は死んでいただろう。あんな怖い目に遭っておきながら、何度も俺に近づいてくる。
『大丈夫、私はずっとそばにいるよ』
生まれ変わっても尚、君は同じ言葉を俺にかけてくれるのだな。
亡くなった彼女と同じ顔、同じ声、同じ名前、同じ言葉。まるで生き写しだ。
__初恋だった。
400年以上前、呪いにかかる半年前。彼女__カスミ__は突然俺の上から降ってきた。天使のように空から。
咄嗟に受け止めた俺を見るとその瞬間に、わっ泣き出して言った。
『会いたかった。ずっと会いたかった』
初対面なのにだ。きっと混乱していたのだろう。結局カスミのあの言葉は誰に向けたものだったんだろうな。
俺はこの世でいちばん彼女が怖い。
眠る霞の前髪を分けて、額に口付けをする。あの花畑で与えたものとは違う。純粋な愛おしさ。
そしてこの世の誰よりも彼女が欲しい。



