Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~

「もう、我慢できない」


二つの光るルビーが私を至近距離で貫く。掴まれていた両手はゆっくりとベッドに縫い付けられて指が絡み合う。


「__ん……」


噛み付くように唇が触れる。私に流れる酸素を全て寄越せと舌が口を割って入ってきた。反射的に逃げようとするが彼は後頭部を押さえ込んで逃さない。


私と恭介さんの熱い呼吸音が静かな室内を支配する。さらに粘度の高い水音が弾けた。


彼の痛みを和らげるために必死でキスを受け止める私の舌を、恭介さんの舌がいとも容易く蹂躙する。


苦しくなって絡まり合う指を弱く握ると刹那彼は唇を離すも、繋がる細い糸が切れる前に再び酸素を奪いにくる。


「ハア……」


わずかに鉄の味がする。きっと彼が痛みを耐えるために食いしばった時に傷ついたのだろう。


溺れるキスを振りかざす彼から本能的に足をじりじりと動かしていれば、恭介さんの体が押さえつけてきた。


上顎や歯列、唇を舐め取りやがて息絶えそうな応酬の後、ようやく唇が解放される。ぷはとなんとも恥ずかしい甘い息を吐きだした。


私たちを繋ぐ銀の糸が途切れ、上がる息で恭介さんを見やる。彼の瞳にとろりとした表情の自分が写っていて熱を持った顔がさらに熱くなる。

すると恭介さんはルビーの瞳を細くした。彼の長い指が手の甲をするりと撫でた。