ハンカチを持った手が恭介さんの手に触れる瞬間に、彼は私に気づく。


「触るなッ!!!!」


これまで聞いたことのない彼の怒号。そして沈めていた腕を私に向ける。あっ、と声が出ることもなく私の体は彼の凄まじい力で宙を舞った。


ルビーの瞳がこれでもかと見開いた。助けようと彼は動こうと体を起こすが、激痛に襲われているようで膝を立てて止まる。


その間にも私の体は飛ばされる。いくら広い室内でも壁はある。せめて舌を噛まないように歯を食いしばった。


__ドンっ


「あっぶね……ギリギリセーフってとこ?」


間一髪で夜叉さんが壁と私の間に滑り込んで受け止めれくれた。それでも恭介さんの力が分散できなかったようで壁にヒビが走る。


素早く夜叉さんの腕から抜け出して全力で謝る。今のは近づくなと言ったのに彼に近づいた私が悪い。


「夜叉さん!!恭介さんが……」


「知ってる。とりあえず話は外で」


夜叉さんは必死に恭介さんの重傷度を話す私の手首を掴んで引っ張った。閉じていく扉の隙間から見えた彼の姿は痛々しい。


登校時間が迫り、夜叉さんは屋敷に戻ろうとする私を車に詰め込んだ。降りる隙も与えずに車は発進する。